「エピファニー」の文化的な概要は後半で説明します。目次活用してください。
目次
エピファニー(公現祭)呼称イロイロ
・公現祭
・公現節
・主顕節
・神現祭
・エピファニ―(Epiphanie)
・エピファニア(Epiphanie)
・御公現の祝日
・トゥウェルフス・デイ(Twelfth Day)
・トゥウェルフス・ナイト(Twelfth Night)
・三王来朝の祝日
・東方三博士の祝日
・ジュール・デ・ロワ(jour des Rois/フランス語で「王様の祝日」)
・フェート・デ・ロワ(Fete des Roisフランス語で「王様の祭日」)
・ドライケーニヒ(Drei Könige(ドイツ語で「3人の王様」)
(参考:𠮷田菊次郎「西洋菓子 世界のあゆみ」p.92 /広報しもつけ 2021.1 キプロス通信)
ガレット系
丸く平たく作られて、フェーヴを入れる系のお菓子で、エピファニ―に食べられる習慣があるものを紹介していきます。
順不動です。なんとなく「現時点で日本で有名な順(具体的にはInstagramでハッシュタグ件数が多い順)」。ただし厳密ではない。
ガレット・デ・ロワ|フランス北部など
Galette des Rois
ガレットとは丸く平たいお菓子の総称ですが、ガレット・デ・ロワはアーモンド・クリームや、それとカスタードクリームを合わせたフランジパーヌと称される香り高いクリームを、行くそうにも折り重ねたパイ生地で包んで焼き上げたものですが、その中に、フェーヴfeve(そら豆)と呼ばれる陶製のお人形が忍ばされます。みなで切り分けて食べる時、それに当たった人はその場で男性なら王様、女性なら女王様になって、紙で作られた金色の王冠を頭上に頂き、まわりの人々から口づけの祝福を受けます。(𠮷田 92)
ガトー・デ・ロワ|フランス南部など
Gateas des Rois
南部ではオレンジフラワーウォーターで風味付けしたブリオッシュを美しく焼き上げた「ガトー・デ・ロワ」で祝うのがエピファニ―の習わしなのだそう。
(https://tomiz.com/column/galette-des-rois-recipe/)
ロスコン・デ・レジェス|スペインなど
その日にちなんで、スペインでは、眠っている子どもたちに、ラクダに乗った三賢者がプレゼントを持ってきてくれる「子どもの日」でもあります。この日のもうひとつのイベントは、王様たち(東方三賢人)のケーキを食べること。ケーキというよりは、実はパンんに近いお菓子です。上にのせたフルーツピールは三賢人の帽子の宝石、ルビーやエメラルドを表しています。中にフェーブ(陶器の人形)を入れ、それに当たった人はその一年、幸せに暮らせると言われています。
(丸山久美「修道院のお菓子」,p.57)
ケーニヒスクーヘン|オーストリア・ドイツなど
Heilige Drei Königskuchen
1月6日は公現祭。ということで、ウィーンの公現祭のお菓子といわれるKönigskuchen (ケーニヒスクーヘン)。
パイ生地を型に敷き込み、その中にレーズンやオレンジピール、レモンピールなどのドライフルーツをラム酒に漬けたもの、そしてたっぷりのレモンの皮を加えた別立てのスポンジ生地を流し込み パイ生地で格子状に飾り、刻んだアーモンドとザラメ糖をふって焼き上げます。そして最も大きな特徴は、スポンジ生地に加える小麦粉に、バターを合わせて細かく刻み小豆大にしてから生地と混ぜることではないでしょうか。独特の内層、食感となります。
(https://ameblo.jp/sukinakotozenbu/entry-12235692241.html)
フォカッチャ デッラベファーナ|イタリアなど
Fugassa d’la Befana
ピエモンテ方言で「フガッサ・デ・ラ・ベファーナ」と呼ばれるこのケーキは、長時間発酵させる ふわふわで美味しいケーキです。バター、小麦粉、牛乳、卵で作られるこのシンプルなデザートは、優美なデイジーの形に仕上げられることが多いです 。好みに応じて、砂糖漬けのフルーツ、ドライフルーツ、レーズンなどが詰められることもあります。フォカッチャ・デッラ・ベファーナのユニークさは、その味だけではなく、興味深く楽しい伝統にもあります。ケーキの花びらにはサプライズが隠されています。一口ごとに、白いソラマメと黒いソラマメが2つ見つかるかもしれません。ある言い伝えによると、白いソラマメを見つけた人は一年中幸運に恵まれると言われていますが、黒いソラマメを見つけた人は飲み物をおごらなければならないという言い伝えもあります。
そのほかお菓子系
ガレット系じゃない印象を受ける、エピファニ―に食べられているらしいお菓子と地域(国)を紹介していきます。
エピファニ―タルト(何種類かのジャムタルト)|イギリス
Epiphany Tart
エピファニ―タルトは、イエスと12使徒を象徴する13区画に分けて作るのが伝統です。ヴィクトリア時代には家庭ごとに美しさやデザインを競い合ったといわれています
(https://www.lavenderandlovage.com/2015/01/dorothy-hartley-cattern-cakes-lace-and-a-victorian-epiphany-tart-recipe.html )
エピファニ―タルトは、ショートクラストペストリーを型に敷き、星型に仕切りを作って様々なジャムを詰め、オーブンで焼き上げるイギリスの伝統菓子です。ジャムの種類や仕切りのデザインで個性を出せる、見た目も華やかな一品です
バクラヴァ(ナッツとシロップのパイ)|ギリシャ
Baklava
(↑これはたんに王道のバグラヴァ。「ギリシャでイースターに食べられているバグラヴァ」っぽいものは探せなかったので…)
フロリダ州ターポンスプリングス発 — 公現祭のお祝いは、多くの人がギリシャの伝統料理、特にデザートのバクラヴァを味わう機会です。カテリーナ・スカンダリアリスさんは、毎年十字架の儀式の前にこの料理を作っているそうです。
(https://baynews9.com/fl/tampa/news/2022/01/06/epiphany-baklava-tradition)
ルクマデス(シロップ漬けドーナツ)|ギリシャ
Loukoumades
1月6日には、イエス・キリストの洗礼を祝う祭り「神現祭(キプロスではエピファニー)」がクリスマス休暇を締めくくります。司祭が投げ入れた十字架を追って男性たちが冬の冷たい海に飛び込み、競って拾い上げます(タイトル写真参照)。手にした男性には、神のご加護が与えられるそうです。 また、この日には「ルクマデス」というドーナツに似た揚げ菓子を食べる習慣もあります。
(引用:広報しもつけ 2021.1 キプロス通信)
ベファニーニ|イタリア
Befanini
で、このエピファニアの祝日の時のお菓子がありまして、
ベファニーニ Befaniniと言います。
主にヴェルシリア Versiliaやヴィアレッジョ Viareggio
ルッケジア地方 Lucchesia、(いずれの町や地域もルッカ県)で作られます。
トスカーナ州でと紹介されることが多いですが、
ピサもフィレンツェも作らない地域のほうが多いかも。
この祝日のお菓子といっても、
クッキーです。
ラム酒風味の生地にしたり、
オレンジの皮とアニスのリキュールを入れたり、
子供が食べる時はアルコール類を入れず普通のクッキーで。
元々は6‐7㎝くらいの細長く作ったクッキーだったそうですが、
今は型ぬきが色々ありますから、
天使の形とか、
星とかで作ることが多いです。
そして共通しているのが、
上にこの鮮やかな砂糖菓子を振る。
ルッカ出身のお母さんを持つ同僚は、
週末オジーちゃんおばーちゃんのところにいって一緒にベファニーニを食べてきたんですって。
(https://ameblo.jp/soredemoitalianawake/entry-12835863405.html)
エピファニ―とは・ピックアップ基準など
エピファニ―(公現祭・主の公現の祭日)とは
「主の公現」の祭日とは、神の栄光がキリストをとおして、すべての人に現れたことを祝う日です。キリストの降誕によって、神が私たち人類と共におられることが明らかにされます。それは闇の中に光がさしこむような出来事でした。神に希望をおく人は、その光に従って生きていきます。
公現の祭日は、はじめ、東方教会で、主の降誕、占星術の学者の来訪、洗礼、カナにおける最初の奇跡など、神の顕現を祝う日としてはじまりました。西方教会では、12月25日の主の降誕祭が成立していたので、公現は主に占星術の学者の来訪を祝うものとして取り入れられました。
神の栄光がキリストにおいて現れ、すべての人におよぶ救いの光が輝きはじめていることを賛美する公現の祭日は、4世紀以来ずっと教会で大切にされてきた日です。
(引用:聖パウロ女子修道会ウェブサイト「ラウダーテ」より)
ピックアップ基準
・日本語で調べられたもの(書籍・WEB記事なら複数の言及があるもの)。
・まずは日本語でInstagramハッシュタグ検索→なければ他言語で探す
・Instagram埋め込み基準①→お店やサービス系優先(アカウントがクローズドになる可能性が低いと思ったため)
・Instagram埋め込み基準②→概要欄にエピファニ―のお菓子であることが伺えるもの優先
・Instagram埋め込み基準③→概要欄の記述が長すぎないもの優先(スクロールの負担になるため)
雑感
同じアルバイトに就いていた大学生の女性が「好きだった少女マンガの影響で、『シュトレン』と『ガレット・デ・ロワ』に憧れがある…」と話してくれたので、クリスマス時期と、彼女の卒業時期にそれぞれ初挑戦で作って贈ってみた(彼女は別にキリスト教徒というわけではない。大学はカトリック系だったけれど、そこに深い理由はないっぽい。)。
(彼女は古い少女漫画を愛でるのが嗜好のひとつにある人だったので『若い人は軒並みシュトレンやガレット・デ・ロワに憧れてくれている』と早合点しないように注意)
なので、ガレット・デ・ロワ周りを調べていたら、エピファニ―の定番菓子にガレット系だけでも地域ごとの特色があるのが見えてきて、おもしろいと思った。
エピファニ―の定番菓子も、イースターやクリスマスを祝う国の数だけある気配がするが、日本ではエピファニ―自体そこまで知名度がないし(イースターの方がまだ知名度があると思う)、とりあえずこれくらいでいいんじゃないかと思って公開する。