同じ教会に通う人に、ある団体へのサポートを勧められたけど、ほんとうに効果的なんだろうか…と疑ってしまう
「キリスト教精神」で生活の支援をしている団体がいいのか…それとも「福音伝道します」ありきでやってるところを応援したほうがいいのか…正直迷う
キリスト教会(集会)に通われている方のなかには、こんな体験をされた方も多いのではないでしょうか。
これを書いている私自身、これはつねづね課題でした。とはいえ、自分にそれを判断するような基準も持っておらず、とりあえず「縁があったところを大事にしよう」くらいに考えていました。
そんな時読んだ「効果的な利他主義」という本に、『慈善団体を判断する基準』について事細かく解説されているのを発見しました。これは参考になるのではないかな、と思い、ここでみなさまと慈善団体の判断基準をシェアしてみたいと思います。
〈効果的な利他主義〉宣言! ――慈善活動への科学的アプローチ
まず、この本で推奨していることをざっっっくりと結論からお伝えしてみます。
- 少額で多くの人の命を救いたいなら、開発支援(貧困国支援)が効果的(災害支援や、特定の難病の活動などと比べて)
- さらに、衛生と教育プログラムに関わるものが効果的
そのうえで、さらに細かい指標がコチラ。
(1)この慈善団体の活動内容は?
(2)各プログラムの費用対効果は?
(3)各プログラムが有効であることを裏づける証拠の信憑性は?
(4)各プログラムはどれくらい適切に実施されているか?
(5)その慈善団体は追加の資金を必要としているか?(p.216~217)
これらを踏まえて、マッカスキル氏のおススメ団体をが紹介。
また、後半からは「それらを選ぶ理由」と、「それでも福音を伝えたい」という方向けに、福音を伝えることを念頭に置いている団体の紹介をしてみたいと思います。
迷いのある方の判断基準になれば幸いです。
・
・
・
・
・
・
目次
少額でも効率的にたくさんの人の命を助けられる支援団体の探し方とおすすめ7選
※画像はすべてGoogleChromeで翻訳しています。
そもそもの探し方→ギブウェル(Give Well)
「効果的な利他主義」を推しているウィリアム・マッカスキル氏は、そもそもギブウェル(Give Well)という『慈善団体評価機関』を推しています。
こういった評価機関はほかにもある(※)そうですが、この本はGive Wellを推しています。
いまから紹介する慈善団体の例は、書籍をもとにしているため、ちょっと古い可能性もあります。ですので、最新の一番評価が高い団体を知りたい」という場合は、この詳細が知りたい方は本をお確かめください。ギブウェル(Give Well)に行ってご自身で判断していただくのが良いかと思います。
(※)ほかの評価機関の例に「チャリティ・ナビゲーター」というのを挙げているが、これは財務情報をもとにその慈善団体を判断するという評価方法基準らしく、「その慈善プログラムが有効かどうか」といったことを測定できる指標ではないとして、マッカスキル氏はギブウェルのほうを推している。(p.109~)
ギブ・ダイレクトリー(GiveDirectly)
活動:ケニアとウガンダの貧困世帯に条件なしで直接送金を行う。
推定される費用対効果…まぁまぁ高い。1ドル(約104円~)寄付すると、ケニアとウガンダの再貧困世帯に90セントが届けられる。その結果、投資、消費、教育支出、主観的な幸福度が高まる。
証拠の信ぴょう性…きわめて高い。送金プログラムの有効性を裏づける調査が数多く行われている。また、ギブダイレクトリーは独立系の評価機関と協力し、自身のプログラムに対するランダム化比較試験を行っている。
実施の質…きわめて効果的に実施されている。この慈善団体は、有力な開発経済学者が運営にかかわっており、非常にオープンで、透明性が高く、自身に対して客観的。
追加資金を受け取る余地は?…きわめてある。2015年、ギブダイレクトリーは追加の2000万~3000万ドルの資金を効率的に活用する余地があると見積もっており、同期間におよそ1000万ドルを調達できる見込み。将来的にはそれ以上の規模へと拡大する可能性も非常に大きい。
(参考:ウィリアム・マッカスキル著/千葉敏生訳「〈効果的な利他主義〉宣言!事前活動への科学的アプローチ」p.127~128)
ディベロップメント・メディア・インターナショナル(Development Media International;DMI)
活動:ブルキナファソの住民に基本的な衛生問題について啓もうするラジオ番組の制作と運営を行っている。今後はコンゴ民主共和国、モザンビーク、カメルーン、コートジボワールにも活動を展開する予定。
推定される費用対効果…きわめて高い。過去の調査に関するDMIの見解と、DMI独自の数学的モデルによると、費用対効果は1QALTYあたり10ドル(約1000円~)前後。
証拠の信ぴょう性…まあまあ高い。外部の調査機関と協力して自身のプログラムに関するランダム化比較試験を行っているが、最終的な志望データがまだ集まっていない。現在のデータは自己報告に基づくもの。
実施の質…非常に効果的に実施されている。CEOのロイ・ヘッドは発展途上国でのラジオ番組の運営経験が豊富。DMIは一流の疫学者たちと協力して有効性を監視しており、オープンで、透明性が高く、自身に対して客観的。
追加資金を受け取る余地は?…おおいにある。新たな4か国に活動を拡大するため、2015年にはおよそ1000万ドルを活用する余地があると考えており、およそ200万~400万ドルを調達できる見込み。
(参考:ウィリアム・マッカスキル著/千葉敏生訳「〈効果的な利他主義〉宣言!事前活動への科学的アプローチ」p.128)
デウォーム・ザ・ワールド・イニシアティブ(The Deworm the World Initiative)
活動:ケニアやインドの政府が学校を中心とする駆虫プログラムを実施できるよう技術支援を提供している。
推定される費用対効果…非常に高い。自分たちで駆虫プログラムを実施する代わりに、政府に技術支援を提供しているため、デウォーム・ザ・ワールド・イニシアティブが負担するコストは子どもひとりあたり年間約3セントときわめて低い。
証拠の信ぴょう性…非常に高い。ふたつの本格的なランダム化比較試験(うちひとつは長期追跡調査を含む)によると、寄生虫の駆除は教育や経済に大きな利益をもたらすようだ。しかし、自分たちで駆虫プログラムを実施する代わりに、政府に技術支援を提供している以上、デウォーム・ザ・ワールド・イニシアティブの支援がなければ駆虫プログラムを実施できなかったかどうかは不明。
実施の質…非常に効果的に実施されている。活動についてはたいへんはっきりと公開されている。
追加資金を受け取る余地は?…それほどない。2015年と2016年の両年において200万ドルの追加資金を活用する余地があるが、最低でもそれくらいの額は集まる見込み。
(参考:ウィリアム・マッカスキル著/千葉敏生訳「〈効果的な利他主義〉宣言!事前活動への科学的アプローチ」p.129)
住血吸虫症対策イニシアティブ(Schistosomiasis Control Inisiative;SCI)
活動:サハラ以南のアフリカ諸国の政府に、学校や自治体を拠点とする駆虫プログラムを実施するための資金を提供。その後、助言の提供、寛氏、評価を実施している。(住血吸虫症は寄生虫感染症の一種。当初、SCIはその名称どおり住血吸虫症だけに活動をしぼっていたが、現在ではほかの寄生虫感染症も治療している。)
推定される費用対効果…非常に高い。寄生虫の駆除にかかるコストは子どもひとりあたり年間1ドル未満。
証拠の信ぴょう性…非常に高い。ふたつの本格的なランダム化比較試験(うちひとつは長期追跡調査を含む)によると、寄生虫の駆除は教育や経済に大きな利益をもたらすようだ。
実施の質…まあまあ効果的に実施されている。ギブウェル(※)はSCIの活動に関する透明性や情報公開について一定の懸念を示している。
追加資金を受け取る余地は?…まあまあある。2015年、SCIは追加のおよそ800万ドルの寄付金を効率的に活用する余地があると考えているが、2015年にどれくらいの資金を調達できる見込みなのか、資金が十分に集まる可能性があるのかどうかは不明。
(参考:ウィリアム・マッカスキル著/千葉敏生訳「〈効果的な利他主義〉宣言!事前活動への科学的アプローチ」p.129~130)
(※)…
アゲンスト・マラリア基金(Against Malaria Fondation)
活動:サハラ以南のアフリカの貧困世帯に持続性の高い殺虫剤入り蚊帳を購入し、配布するための資金を提供している。
推定される費用対効果…非常に高い。6ドルでふたりの子どもを平均2年間マラリアから守ることができる蚊帳を1張配布できる。費用対効果は1QALTY(※)あたり推定100ドル。
証拠の信ぴょう性…非常に高い。蚊帳の有効性を裏づける複数のランダム化比較試験とふたつのメタ分析が行われている。
実施の質…きわめて効果的に実施されている。透明性や情報公開がきわめて優れている。
追加資金を受け取る余地は?…きわめてある。2015年、アゲンスト・マラリア基金は2000万ドルを効率的に活用する余地がある。
(参考:ウィリアム・マッカスキル著/千葉敏生訳「〈効果的な利他主義〉宣言!事前活動への科学的アプローチ」p.130~131)
リビンググッズ(Living Goods)
活動:ウガンダで家々を回り、マラリア、下痢、肺炎の治療薬、石鹸、生理用ナプキン、避妊具、ソーラー・ランタン、高効率コンロなどの衛生関連商品を安価で販売したり、健康管理に関するアドバイスを提供したりする地域の衛生推進者たちのネットワークを運営している。
推定される費用対効果…非常に高い。リビング・グッズが自身のプロジェクトを対象に行っているランダム化比較試験の推定によると、リビング・グッズが実行しているプログラムに3000ドルを投じるたびにひとつの命が救われるほか、さまざまなメリットが生じるという。一方、ギブウェルは1万1000ドルでひとつの命を救えると推定している。
証拠の信ぴょう性…まあまあ高い。リビング・グッズが実行しているプログラムをのものに対して、独立した調査機関による高品質な調査が行われている。しかし、ここにリストアップされているほかのプログラムのように、複数の調査に基づく証拠はない。
実施の質…まあまあ効果的に実施されている。リビング・グッズはオープンで、情報提供に関してはまあまあ透明性が高い。しかし、継続的な監視や評価は限られている。
追加資金を受け取る余地は?…まあまあある。リビング・グッズの今後3年間の予算は年間およそ1000万ドル。
(参考:ウィリアム・マッカスキル著/千葉敏生訳「〈効果的な利他主義〉宣言!事前活動への科学的アプローチ」p.131)
(※)…
ヨウ素・グローバル・ネットワーク(The Iodine Global Network;IGN)
活動:塩をヨウ素で強化する政府の活動をサポートする。その後、実施されたプログラムの進捗を監視し、国に応じたガイダンスを提供する。
推定される費用対効果…非常に高い。ヨウ素の欠乏は、発展途上国で肉体や知能の発育阻害の大きな原因となっている。ヨウ素の強化は低コストでこうした問題を緩和できる。このプログラムに1ドル投資するたびに27ドルの経済的便益があるとの推定もある。(※)
証拠の信ぴょう性…まあまあ高い。ヨウ素による塩の強化は十分な研究がなされているプログラムであり、人々の生活の大幅な改善につながることが証明されている。しかし、IGNはみずからヨウ素の強化プログラムを実施しているわけではないので、IGNの活動のおかげでヨウ素添加塩を摂取する人々が増えているかどうかを評価することが重要だ。この点はまだ不明。
実施の質…非常に効果的に実施されている。IGNはオープンで透明性が高く、微量栄養素欠乏に関する第一人者たちによって運営されている。
追加資金を受け取る余地は?…あまりない。IGNの2014年の予算はわずか50万ドルだったが、2015年には100万ドルを効率的に活用する余地があるとギブウェルは見積もっている。現時点ではそのうち40万ドルしか調達できておらず、60万ドルの追加調達の余地がある。
(参考:ウィリアム・マッカスキル著/千葉敏生訳「〈効果的な利他主義〉宣言!事前活動への科学的アプローチ」p.132)
(※)…
大手団体・災害支援・搾取工場問題などへの見解
「ワールドビジョン」「オックスファム」「ユニセフ」「救世軍」を除外する理由
その慈善団体があなたの寄付金をどう使うかを正確に知る必要があるが、多くの慈善団体の場合、その答えははっきりしない。たとえば「救世軍」の場合、プログラムごとの具体的なコストや、寄付によって実現する内容は記されていない。
(参考:p34)
「ワールドビジョン」「オックスファム」「ユニセフ」といった慈善団体は、巨大すぎてさまざまなプログラムを実施している。評価が難しい。
(p.125~)
仮に詳しく評価できたとしても、上記の慈善団体よりも効果的であるとは考えにくい。たくさんプログラムがなされているということは、効果的なものとそでないものがあるため。であるならば、単純に効果的なプログラムに集中させたほうが良い。
(p.125~)
といった理由で、「費用対効果を考えるなら、その効果を測定している団体に寄付するほうが効果的」としているようです。
〈効果的な利他主義〉宣言! ――慈善活動への科学的アプローチ
災害支援を除外するワケ
多くの場合、災害の規模や深刻度ではなく、センセーショナル性や報道の規模に比例するような資金の集まり方になっているように見えるため
これに関して、「収穫逓減の法則」で詳しく解説しています。(p.62~)
搾取工場の商品を避ける、ということも推奨しない
発展途上国では、搾取工場の仕事はむしろよい仕事なのだ。工場で働けなくなれば、低賃金で肉体を酷使する農業労働、ごみあさり、失業などふつうはいっそう劣悪な状況が待ち受けている。
(p.136)
搾取工場が比較的よい仕事を提供しているという明確な証が、発展途上国の人々からの巨大な需要だ、搾取工場の労働者のほぼ全員が自分の意志で働いており、なかにはあの手この手で工場の仕事にありつこうとする人々もいる。
(p.136)
…などなどの理由で、ウィリアム・マッカスキル氏は「費用対効果をバッチバチに考えていく」方法を提示じしています。
神さまからあずかった大事なお金ですから、キリスト教精神が通底しているとかいないとかを超えて、より効果的に使ってくれる団体を支援するのも手かな、と思います。
ただし、この著者はあくまで「費用対効果に全振り」として考えている印象です。付き合いとか、自分が使命を感じるかなどの要素は一切入っていません。そのへんはご自身と神さまとの間で相談してお考えくださればと思います。
では、「だったらいっそ『伝道』ありきで活動してる団体の方がいい」と思われる方のために、福音伝道が活動内容に入っている団体を紹介してみます。
その前に。「年収100万あったら世界の上位85%に入っている」…らしい話
その前に、「世界的に見た自分の年収の立ち位置」についてなんとなく参考になりそうなくだりもあったので、軽く抜粋してみます。
あなたが年間5万2000ドル以上稼いでいるなら、世界的に見ると上位1%に属する。(日本円で約5,384,132円/2020年11月)
あなたが年間2万8000ドル以上稼いでいるなら、世界的に見ると上位5%に属する。(日本円で約2,899,092円/2020年11月)
あなたが年間1万1000ドルを下回っていたとしても、世界的の85%の人々よりかは裕福(日本円で約1,138,929円/2020年11月)
(p.19)
いや、でもさ…
貧困国は自給自足経済だし、物価は安いだろうから、貨幣では測れないのでは?みんな貧しいなりにどうにか生きてる環境なのでは?
だってそんなに少ない収入だと死ぬし……
という疑問を持たれる方もいらっしゃることと思います。これに関しても、マッカスキル氏は
うん。コレ各国の物価織り込み済みでの計算やねん。
だから貧困国では単に「死んでる」だけやねん。
と言っており、先進国と呼ばれる場所ではパっとしない年収であっても、使いようによっては世界にインパクトを与えられることを説明しています。
費用対効果はともかく「伝道ありき」で活動している団体
じゃあここからはクリスチャンのエゴ丸出しで「福音伝道ありき」でやってる団体を紹介していくわよ
われわれもあまり詳しくないので、ご存じでしたら教えてくださいませ。基準は「福音伝道ありきで活動しているプログラムがあるか、ないか」です。(「キリスト教精神で」とかでなく)
・発展途上国の開発支援が含まれているもの
・若年層に関わる支援をしているもの
は優先的に紹介したいかな、と思います。順番は不同です。(増えたら五十音順にするかも)
メトロ・ワールド・チャイルド(日本事務局アリ)
活動:ケニア/フィリピン/アメリカのスラムで教会学校を開催&支援が必要な家庭の子どもたちにスポンサーをつける/サマーキャンプの開催/その他食事や日用品支援など
サマリタンズパース(日本事務局ナシ)
活動:いろいろやってるけれど、日本では「オペレーションクリスマスチャイルド」という、『クリスマスプレゼントを贈って子どもたちに弟子訓練コースを受けてもらう』というのをやっていました。
注意点:控除対象にならない
「ワールドビジョン」「ユニセフ」「災害支援」などは、日本からの寄付が控除対象になると思うのですが、おそらく「日本支部がない海外慈善団体」や「宗教色の強い慈善団体」は、税の控除の対象にはならないのだと思います。そのへん気になる方はご注意ください。
→No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)【国税庁】
ということで、迷っている方の参考になれば幸いです~